アンコールはリビングで
「……ここ、結んでくれる……?」

後ろを向いたまま。

首だけを少しこちらに捻り、上目遣いで、ものすごく恥ずかしそうに頬を赤く染めて、彼女が俺にそう頼んできたのだ。

(…………っ、やべぇ。破壊力、高すぎだろ)

俺はまだ、彼女が水着を着た全容すら見ていないというのに。

背中と、うなじと、その恥じらう上目遣いだけで、心臓がバカみたいにうるさい音を立てて暴れ出しそうになっていた。

こんな至近距離じゃ、俺の心音が凪に聞こえちまう。

俺は、先日のモデル撮影の時のように、頭の中にクールな早瀬湊を降臨させ、内側の爆発しそうな緊張と興奮を悟られないように必死で息を整えた。

「なんだよ、凪。後ろだと結べねぇの?」

さも普通のことであるかのように、少しだけからかうようなトーンを作って声をかける。

「……恥ずかしいんだけど、私、だめなの。後ろにあると、紐がどうなってるか分からなくなっちゃって、どうしても綺麗にリボン結びができなくて……」

凪が、もじもじと身をよじりながら白状する。

「だから私、エプロンも後ろで結ばなくて済む、前結びのタイプとか、かぶるだけのタイプにしてて……」

「…………」

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