アンコールはリビングで
3. 理性の決壊

***

エレベーターが最上階の客室フロアに到着し、静かな廊下を歩く間も、彼と繋いだ手からはドクドクと互いの脈拍が伝わってきた。

バーでの彼は、信じられないくらい素直で、甘かった。

あの日からずっと言わずにいたカクテル言葉を打ち明けて、あんなにもストレートに愛情を伝えてくるなんて。

今でもまだ、私の頭の中はアルコールと彼の言葉の熱でふわふわと痺れている。

「ここだ」

湊がルームキーをかざし、重厚なドアがガチャリと音を立てて開いた。

部屋に入った瞬間、目の前の大きな窓いっぱいに、宝石箱をひっくり返したような東京の夜景が広がっていた。

「わぁ……っ、すごい……!」

私が思わず歓声を上げて窓の方へ歩いて行こうとした、その時だった。

< 1,028 / 1,077 >

この作品をシェア

pagetop