アンコールはリビングで
「そ、そこそこじゃないってば……! ……あの、私、もう元気ないかなーって……」

私は必死に布団を握りしめ、やんわりと朝のラウンドを辞退しようと試みた。

すると、湊の動きがピタリと止まった。

彼が顔を上げ、私の目を見つめる。

「そうか」

湊は、どこか納得したように頷いた。

「じゃあ、凪はそのまま横になっとけ。……俺がまた、たっぷり甘やかしてやるから」

「……えっ?」

その瞬間。

湊の琥珀色の瞳の奥で、キラリと、見覚えのある光が瞬いた。

「……っ」

私はそこでようやく、ある事実に気がついた。

昨晩の甘さを、朝になっても引きずっていた理由。

それは、魔法でもなんでもない。

彼がただ単に甘えん坊になっていたわけでもない。

『俺がまた、たっぷり甘やかしてやる』。

つまり、元・凄腕デベロッパーである彼は。

昨夜のことで疲れ切っている私に、警戒心を抱かせず、布団の中にいたいと思わせるために。

わざとあの映画のような甘い朝を演出し、私のガードを極限まで下げていたのだ。

すべては、朝からもう一度、私を美味しくいただくための完璧な罠(プレゼンテーション)。

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