アンコールはリビングで
(……もう一回だけ)

私は洗面所へ引き返し、コンセントに繋いであったドライヤーのコードを抜いた。

それを片手にリビングへ戻り、無言のままソファに座る彼の前に立って、その手元へとドライヤーを差し出す。

「……ん?」

湊がスマホから視線を上げ、不思議そうに私を見上げた。

「……ねえ、湊。髪、乾かして?」

私が少し首を傾げ、甘えた声を出してお願いすると。

湊は目を丸くした後、ふぅっと大きくため息をついた。

「……凪さぁ。今日、マジでどうしたの? 朝から完全に俺を顎で使ってんじゃん」

口ではそんな文句を言いながらも、彼は迷わずスマホをローテーブルに置き、私の手からあっさりとドライヤーを受け取ったのだ。

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