アンコールはリビングで
美容師さんみたいに手際がいいわけじゃない。

けれど、髪の毛一本一本まで大切に触れてくれているのが伝わってくる、最高に優しい手つきだ。

「……なぁ、凪」

「ん?」

「絶対俺のこと試して楽しんでるだろ」

ドライヤーの音に混じって、頭の上から低い声が降ってきた。

図星を突かれ、私の肩がピクッと跳ねる。

「……今日、ずっと俺の服着て、俺にメシ作らせて、髪まで乾かさせて。……俺がどこまで甘やかすか、どんな顔すんのか、見て楽しんでんじゃん」

「……バレた?」

私が振り返らずにくすっと笑うと、湊の指が私の頭皮を軽く、悪戯っぽく揉みほぐした。

「バレバレ。……でも、悪くねぇよ」

カチリ、とドライヤーのスイッチが切られ、部屋がふっと静寂に包まれる。

次の瞬間、彼が後ろから私の肩に顎を乗せ、そのまま両腕を前に回して、私をすっぽりと抱きしめた。

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