アンコールはリビングで
5. 手のひらの中

「……ずるいなあ、湊は」

「あ? 俺、なんかしたか」

「ううん、なんにも。……ちょっと、悔しいだけ」

私は彼の腕の中で少しだけ身体をよじり、重ねていた手の甲から指先へと手を滑らせて、自分の指をそっと絡ませた。

長さも、太さも、私の指とはまるで違う男性の指。

指先には、少しだけ硬いタコがある。

何万人もの前でギターを鳴らしているその特別な指が、今は私だけのものとして、私の手の中にある。

湊はいちど私の指に強く絡ませ返して、それからゆるくほどくと、今度は私の手を自分の手のひらに乗せて、空いた手で私の指を一本ずつ弄びはじめた。

撫でては軽く握って、また関節のあたりをゆっくりとなぞって。

まるで手持ち無沙汰な子どもが、お気に入りのおもちゃを触っているかのように、いじっている。

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