アンコールはリビングで
3. 想像する食卓と、当たり前の優しさ

湊に手を引かれてたどり着いたのは、路地のさらに奥にある、作家ものの器と漆の箸を扱う小さな店だった。

引き戸を開けると、ふわりと木の心地よい香りが漂ってくる。

私は空間デザインという仕事柄、素材の質感や色合いを見るのが好きだ。

棚に並べられた器を一つひとつ目で追いながら、火曜日に結婚を報告してくれた理紗の顔を思い浮かべる。

彼女はこれまで、現場の仕事に追われてお昼も夜もコンビニのおにぎりで済ませてしまうことが多かった。

そんな彼女が、十年の片想いを実らせて、今では旦那さんである沢木課長がご飯を作って待つ家に帰り、一緒に食卓を囲んでいる。

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