アンコールはリビングで
「……なに笑ってんだよ」

「ううん。湊は相変わらず、白米に並々ならぬ執着があるなぁと思って」

「なんだよそれ」

湊は少し不満そうに眉をひそめたものの、キャップのつばを指で少し押し上げると、ふいっと顔を背けてボソリと呟いた。

「……最近は俺だって、白米と同じくらい、もち麦入ってんのが好きなんだよ」

照れ隠しのようにそっぽを向くその横顔に、胸の奥がキュンと甘く痺れる。

健康のためにと私がもち麦ごはんを炊くたび、ブツクサ文句を言っていたくせに。

いつの間に、そんなふうに好きになってくれていたんだろう。

ふと視線を感じて振り返ると、奥にいた店主の年配の女性が、私たちを見て微笑ましそうに目を細めていた。

『新婚さんかしら』と思われているのが、言われなくても店内の温かい空気で伝わってくる。

私たちはそのことを否定も肯定もせず、ただ静かに顔を見合わせた。

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