アンコールはリビングで
この結婚祝いの贈り主の欄に、湊の名前を書くことはできない。

けれど、ここに並んだ二つの茶碗には、間違いなく、私と彼の二人の祝福が込められているのだ。

「……ねえ、湊。これにしようと思う」

「ん、いいんじゃね」

「お箸は、このシンプルな拭き漆のものにしようかな」

私が差し出した漆の箸を、湊が受け取って茶碗の上に添えてみる。

何も言わなくても、私の意図を汲み取ってくれる。

こういう小さなやり取りの重なりが、お互いの時間を証明してくれているような気がする。

レジでお会計を済ませ、しっかりとした緩衝材で包まれた器が二つと、木箱に入った夫婦箸。

それなりの重さになった紙袋を私が受け取ろうとした時、湊が横からスッと手を伸ばし、ごく自然にその紙袋を奪い取った。

「あ、湊。私持てるよ。そんなに重くないし……」

「いいから」

私が手を伸ばしかけると、湊は少しだけ意地悪に笑って、紙袋を持った手をひょいと持ち上げた。

「ここ数日、やっと俺に素直に甘えるの覚えてくれたんだからさ。こういうのも、たまには黙って任せとけっての」

それは、私の「しっかり者の年上彼女でいなきゃ」という遠慮を、優しく溶かす言葉だった。

「……うん。じゃあ、お願い。ありがとう」

「おう。任せとけ」

私が素直に引き下がると、湊は満足げに鼻を鳴らし、再び私の空いた手をしっかりと握り直した。

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