アンコールはリビングで
「あっ……」

彼の大きな手が私の顎をそっとすくい上げ、親指の腹が、私の唇の端を優しくなぞる。

「……クリーム、ついてるぞ」

低い声とともに拭い取られた指先を、湊はそのまま自分の口元へと運び、色気のある仕草でペロリと舐めとった。

「……っ! みな、と……」

「誰も見てねぇって。……それに、こういうの望んでたんじゃねぇの?」

からかうような、けれど熱を帯びた瞳で見つめられ、私は言葉に詰まった。

『甘ぇ。……可愛いっすね、凪さん』

ふと、付き合う前、まだ他社の後輩として猫をかぶっていた頃の彼を思い出す。

あの頃から、彼はこんなふうに強引で、甘くて、私に猛アタックを仕掛けてきていたのだ。

あれからずっと、彼から向けられる熱量も、私を甘やかす手つきも、何一つ変わっていない。

私が赤くなった顔を誤魔化すようにアイスティーのグラスに手を伸ばすと、湊は満足げに自分の席へと深く座り直した。

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