アンコールはリビングで
「君……普段は古書店員なんだろ……? どこにそんな体力が……?」

俺……いや、佐伯怜司は肩で息をしながら、前を行く舞花に問いかける。
額には霧吹きで作られた偽の汗と、本物の汗が混じっている。

「何を言ってるんですか、佐伯さん! 古書店員って意外とハードなんですよ? アナログ女子なめんなよ、ですよ!!」

舞花は涼しい顔で振り返り、怜司を挑発する。

「はい、カットー!! ……うーん、ごめん! ちょっと雲がかかって光が変わっちゃった! もう一回!」

監督の声が無慈悲に響く。

これで5回目の撮り直しだ。

階段下へ戻る俺に、スタッフたちが「早瀬くん、本当に何度も申し訳ない!」と頭を下げる。

「いえいえ、これくらい大丈夫ですよ! 気にしないでください。最高のワンシーンにしましょう!」

階段下から爽やかに声をかける俺。
だが、内心は冷や汗ものだった。

(……うお……普段筋トレしてる俺だから何とかやれてっけど……これかなりキツいわ。足パンパン。朝のトレーニング軽めにしといてマジでよかった……)

凪の管理下で鍛えていなければ、今頃膝が笑ってNGを出していただろう。

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