アンコールはリビングで
4. 夜闇の誤算
夜二十一時。
会社を出て、ようやくネクタイを少しだけ緩める。
冬の気配を含んだ風が、火照った頬を撫でていく。
自販機で買った微温い缶コーヒーを握りしめながら、俺はふと夜空を見上げた。
仕事を辞めて音楽一本で生きていく勇気もなければ、音楽を捨てて仕事に生きる割り切りもできない。
中途半端な自分を、完璧なスーツで隠して。
俺はいつまで、この綱渡りを続ければいいんだろう。
「……そろそろ、行くか」
ゴミ箱に空き缶を投げ入れる。
ここから電車で数駅離れた大きな公園の片隅。そこが、俺が誰にも邪魔されずに路上ライブの練習ができる、数少ない場所だ。
早くこの窮屈な「戦闘服」を脱いで、ただの音楽好きの若者に戻りたい。
そう思って駅の方へ足を向けた、その時だった。
ジャケットの内ポケットで、社用携帯がけたたましく震えた。
画面に表示されているのは、プロジェクトの統括部長の名前だ。
嫌な予感が背筋を駆け上がる。
夜二十一時。
会社を出て、ようやくネクタイを少しだけ緩める。
冬の気配を含んだ風が、火照った頬を撫でていく。
自販機で買った微温い缶コーヒーを握りしめながら、俺はふと夜空を見上げた。
仕事を辞めて音楽一本で生きていく勇気もなければ、音楽を捨てて仕事に生きる割り切りもできない。
中途半端な自分を、完璧なスーツで隠して。
俺はいつまで、この綱渡りを続ければいいんだろう。
「……そろそろ、行くか」
ゴミ箱に空き缶を投げ入れる。
ここから電車で数駅離れた大きな公園の片隅。そこが、俺が誰にも邪魔されずに路上ライブの練習ができる、数少ない場所だ。
早くこの窮屈な「戦闘服」を脱いで、ただの音楽好きの若者に戻りたい。
そう思って駅の方へ足を向けた、その時だった。
ジャケットの内ポケットで、社用携帯がけたたましく震えた。
画面に表示されているのは、プロジェクトの統括部長の名前だ。
嫌な予感が背筋を駆け上がる。