アンコールはリビングで
3. 天秤にかけられないもの
高校に入ると、そのズレはもっと明確な形になった。
初めてできた彼氏は、隣のクラスの文系男子。爽やかで優しい人だった。
放課後、一緒に帰ったり、ファミレスでテスト勉強をしたり。いわゆる「青春」っぽいことは一通りやったと思う。
けれど、彼のイヤホンから流れてくるのは、いつも流行りの甘いラブソング。
私が「これ聴いてみて」と貸した洋楽のCDは、数日後に「なんか難しかったわ(笑)」と返された。
彼が悪いわけじゃない。
ただ、二人の間にあるリズムが、決定的に違っていたのだ。
2年生になり、私が理系クラス、彼が文系クラスに分かれると、その不協和音は決定的になった。
「凪、最近忙しそうだな」
「うん、数Ⅲの進度が速くて……予習しないとついていけなくて」
会話が続かない。
彼は部活と現代文の話、私は物理の補習と模試の話。
自然消滅のような形で連絡が減り、本格的な受験シーズンに突入すると、私たちはいつの間にか「他人」に戻っていた。
冬のある日、渡り廊下ですれ違った彼が、同じ文系クラスのふわふわした可愛い女の子と、イヤホンを片耳ずつ分け合って歩いているのを見た。
(……うん。あっちの方が、きっと音が合ってる)
胸がチクリとしなかったわけではないけれど、それ以上に深く「納得」してしまった自分がいた。
高校に入ると、そのズレはもっと明確な形になった。
初めてできた彼氏は、隣のクラスの文系男子。爽やかで優しい人だった。
放課後、一緒に帰ったり、ファミレスでテスト勉強をしたり。いわゆる「青春」っぽいことは一通りやったと思う。
けれど、彼のイヤホンから流れてくるのは、いつも流行りの甘いラブソング。
私が「これ聴いてみて」と貸した洋楽のCDは、数日後に「なんか難しかったわ(笑)」と返された。
彼が悪いわけじゃない。
ただ、二人の間にあるリズムが、決定的に違っていたのだ。
2年生になり、私が理系クラス、彼が文系クラスに分かれると、その不協和音は決定的になった。
「凪、最近忙しそうだな」
「うん、数Ⅲの進度が速くて……予習しないとついていけなくて」
会話が続かない。
彼は部活と現代文の話、私は物理の補習と模試の話。
自然消滅のような形で連絡が減り、本格的な受験シーズンに突入すると、私たちはいつの間にか「他人」に戻っていた。
冬のある日、渡り廊下ですれ違った彼が、同じ文系クラスのふわふわした可愛い女の子と、イヤホンを片耳ずつ分け合って歩いているのを見た。
(……うん。あっちの方が、きっと音が合ってる)
胸がチクリとしなかったわけではないけれど、それ以上に深く「納得」してしまった自分がいた。