アンコールはリビングで
4. 遅れてきた「正解」

……ふと、我に返った。

「……はぁ」

無意識のうちに、深くて重い溜息が出ていたらしい。
ドラマのCMが明け、リビングのスピーカーから再び軽快な主題歌が流れ始める。

隣を見ると、湊が不思議そうな顔で私を覗き込んでいた。

「どうした? いきなり深いため息ついて。……もしかして、昔の男のことでも思い出してた?」

ギクリとした。

この男の勘の良さは、時々怖くなるほどだ。

「……まあ、ちょっとね。学生の頃とか、社会人なりたての頃とか。私、音楽の趣味も仕事のペースも、相手と全然噛み合わなかったなって」

私は苦笑しながら、正直に打ち明けた。

Mステの話も、文系彼氏の話も、仕事優先でフラれた話も。
どうせ過去のことだ。笑い話にするつもりで、いくつかのエピソードをかいつまんで話した。

「だからさ、舞花を見てて思ったの。周りと『好き』の熱量が違うって、結構しんどいことだったなって」

話し終えると、湊はつまらなそうに鼻を鳴らした。
そして、私の手元のマグカップを取り上げ、冷めてしまった白湯をグイッと一口飲むと、不満げに口を開いた。

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