アンコールはリビングで
「サイン計画および空間演出を担当します、早瀬です」

声もいい。けれど、続く言葉は氷のように冷たかった。

「皆さんは空間ブランディングのプロフェッショナルですから、釈迦に説法かとは思いますが……あえて言わせていただきます。
『たかがラッピング、されどラッピング』です」

彼はスクリーンに映し出されたパース図を指し示した。

「どんなに躯体を立派に改修しても、一番利用者の目に留まる『表面(スキン)』のデザインが陳腐であれば、施設全体のブランディングは失敗します。安っぽい装飾で誤魔化すくらいなら、やらない方がマシだ。我々が求めているのは、ただ綺麗に飾ることではありません。この施設の『品格』を決定づける、完璧な仕事です」

そして、彼は挑戦的な視線を私たちに向けた。

「妥協は一切受け入れません。……期待していますよ」

シン……と、会議室が静まり返った。

一目見た時の「素敵……」という浮ついた空気は完全に消し飛び、うちの社員たちはあまりの落差にポカンとしている。

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