アンコールはリビングで
3. 書き直された設計図

……あの夜、かじかんだ指先を温めてくれた缶コーヒーの熱を、私は今でも鮮明に覚えている。

「……ふふ」

記憶の海から浮上すると、そこには変わらないリビングの風景があった。
暖房の効いた暖かい部屋。柔らかいソファ。

そして、私の隣には、あの時の「氷の王子」ではなく、スウェット姿でくつろぐ湊がいる。

私はドラマを見ている彼の横顔を、そっと盗み見た。

あの頃の私は、自分の体が鋼鉄でできていると信じて疑わなかった。
「仕事が恋人」なんて言葉を地で行き、徹夜も、休日出勤も、栄養ドリンクさえ流し込めば無限に乗り越えられると思っていた。

現場の最前線で戦うことこそが、私の存在証明だと信じていたから。

まさかその5年後。
30歳の前厄に体が悲鳴を上げ、大好きだった現場を離れることになるなんて、当時は一ミリも想像していなかったけれど。

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