アンコールはリビングで
「……凪も今、思い出してたんだろ?」

「え?」

「あの非常階段のこと」

「……!」

図星を突かれて、私は目を丸くした。

湊は「やっぱりな」と嬉しそうに笑うと、自然に私の手に自分の手を重ね、指を絡ませてきた。
そのまま、私の手の甲にちゅ、と音を立ててキスを落とす。

「っ……!?」

「俺もさっきから、あの夜のこと思い出してた。……なんか、今の空気で分かったわ」

その体温と唇の感触が、私の思考とリンクする。

以心伝心。
言葉にしなくても、同じ記憶を共有していたことが嬉しくて、私は熱くなる頬を隠しながら彼の手を握り返した。

そう、あの夜があったから、今がある。

私がしみじみと余韻に浸っていると、湊がふいに、少し恨めしそうな声を出した。

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