アンコールはリビングで
3. 侵入者

「凪、怒った? 悪かったって! バカにしたわけじゃねぇよ!」

「……知らない」

慌てて追いかけてくる彼を無視して歩く。
大人げないことは分かっている。でも、一度拗ねてしまった心は簡単には戻らない。

「あ……! ほら、あそこのカフェ!」

沈黙に耐えかねた彼が、通り沿いのカフェを指差した。

「あそこのラテ、美味いらしいぞ。買ってきてやるから。……な? 機嫌直せって」

「……ホットラテ」

「お、任せろ。すぐ買ってくっから、ここで待ってろ」

彼は私の機嫌が少し直ったことに安堵したように微笑むと、カフェの中へと小走りで向かっていった。
一人残された私は、冷たい風に身を縮めながら深呼吸をした。

(……完全に、八つ当たりだ)

仕事のイライラを彼にぶつけてどうするんだ。あとでちゃんと謝ろう。
そう反省していた時だった。

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