アンコールはリビングで
2. 色づく世界
19時。駅前広場の特設ステージ周辺には、そこそこの人が集まっていた。
だが、その熱気は俺に向けられたものではない。
最前列を陣取っているのは、俺の後に控えている人気のインディーズバンド『Silent Blue』のファンたちだ。
最近CDデビューも果たした彼ら目当ての観客たちは、俺の出番など早く終わればいいとでも言いたげに、気もそぞろな表情でスマホを弄っている。
(……アウェーだな)
俺はステージ袖でチューニングをしながら、観客席を見渡した。
いない。
水沢さんの姿はどこにもなかった。
(なんだよ……やっぱり、社交辞令か)
胸の奥が冷たく沈んでいく。
あれだけ「行きます!」なんて熱っぽく言ってたくせに。
所詮は大人の社交辞令。仕事上の円滑なコミュニケーションの一環だったってことか。
「次、早瀬さんお願いします」
「……はい」
スタッフに促され、俺は半ばヤケクソな気持ちでステージに出た。
マイクの前に立つ。
視界には、『Silent Blue』を待つ退屈そうな顔、顔、顔。
俺の歌なんて誰も求めていない。いつものことだ。
それでも歌うしかない。
俺は息を吸い込み、ギターを構え――その時だった。
19時。駅前広場の特設ステージ周辺には、そこそこの人が集まっていた。
だが、その熱気は俺に向けられたものではない。
最前列を陣取っているのは、俺の後に控えている人気のインディーズバンド『Silent Blue』のファンたちだ。
最近CDデビューも果たした彼ら目当ての観客たちは、俺の出番など早く終わればいいとでも言いたげに、気もそぞろな表情でスマホを弄っている。
(……アウェーだな)
俺はステージ袖でチューニングをしながら、観客席を見渡した。
いない。
水沢さんの姿はどこにもなかった。
(なんだよ……やっぱり、社交辞令か)
胸の奥が冷たく沈んでいく。
あれだけ「行きます!」なんて熱っぽく言ってたくせに。
所詮は大人の社交辞令。仕事上の円滑なコミュニケーションの一環だったってことか。
「次、早瀬さんお願いします」
「……はい」
スタッフに促され、俺は半ばヤケクソな気持ちでステージに出た。
マイクの前に立つ。
視界には、『Silent Blue』を待つ退屈そうな顔、顔、顔。
俺の歌なんて誰も求めていない。いつものことだ。
それでも歌うしかない。
俺は息を吸い込み、ギターを構え――その時だった。