アンコールはリビングで
Demo Tape 4 拡散する熱と、君の声
1. 猛アタックと、鈍感な彼女
出会ってから数ヶ月経ち、ようやく「早瀬くん」呼びに昇格してから、俺の猛烈なアタックが始まった。
「凪さん、このアーティストのライブ行きません? ……実は、クライアントからチケット2枚もらったんですけど、俺の周りこういうの好きな人いなくて」
(※嘘だ。彼女の好みをリサーチして、自腹で手配したプラチナチケットだ)
「これ、よかったらどうぞ。ハンドクリームのテスターもらったんですけど、この香りめっちゃ人気らしくて……凪さんの雰囲気に合うかなって」
(※嘘だ。百貨店のコスメカウンターのテスターを片っ端から試して、一番彼女に似合いそうな香りを選んで買ったやつだ)
週に一度だった飲み会を時には週二に増やし、隙あらばプレゼント攻撃を仕掛け、会話の中にさりげなく地雷を埋め込んでみたりもした。
「凪さんって、週末もよく仕事してますけど……彼氏とかに怒られないんすか?」
「あはは、今はいないから誰にも怒られないよー! 自由なもんです」
「へえ……いないんだ。じゃあ、俺が彼氏だったらラッキーですね。俺も仕事人間なんで、一緒に頑張れそうだし」
これ以上ないくらい分かりやすいジャブだと思った。
だが、彼女は「あはは! 確かに早瀬くんなら仕事の話も通じるし、最強の相棒になれそう!」と、屈託なく笑うだけだった。
(……相棒って)
俺がなりたいのは、相棒じゃなくて彼氏だ。
でも、彼女のその無防備な笑顔を見るたびに、「まあ、今はこれでいいか」と毒気を抜かれてしまう。
焦らずいこう。今はまだ、彼女にとっての「一番近い男」でいられればいい。
そう自分に言い聞かせながら、俺たちの名前のない関係は続いていった。
出会ってから数ヶ月経ち、ようやく「早瀬くん」呼びに昇格してから、俺の猛烈なアタックが始まった。
「凪さん、このアーティストのライブ行きません? ……実は、クライアントからチケット2枚もらったんですけど、俺の周りこういうの好きな人いなくて」
(※嘘だ。彼女の好みをリサーチして、自腹で手配したプラチナチケットだ)
「これ、よかったらどうぞ。ハンドクリームのテスターもらったんですけど、この香りめっちゃ人気らしくて……凪さんの雰囲気に合うかなって」
(※嘘だ。百貨店のコスメカウンターのテスターを片っ端から試して、一番彼女に似合いそうな香りを選んで買ったやつだ)
週に一度だった飲み会を時には週二に増やし、隙あらばプレゼント攻撃を仕掛け、会話の中にさりげなく地雷を埋め込んでみたりもした。
「凪さんって、週末もよく仕事してますけど……彼氏とかに怒られないんすか?」
「あはは、今はいないから誰にも怒られないよー! 自由なもんです」
「へえ……いないんだ。じゃあ、俺が彼氏だったらラッキーですね。俺も仕事人間なんで、一緒に頑張れそうだし」
これ以上ないくらい分かりやすいジャブだと思った。
だが、彼女は「あはは! 確かに早瀬くんなら仕事の話も通じるし、最強の相棒になれそう!」と、屈託なく笑うだけだった。
(……相棒って)
俺がなりたいのは、相棒じゃなくて彼氏だ。
でも、彼女のその無防備な笑顔を見るたびに、「まあ、今はこれでいいか」と毒気を抜かれてしまう。
焦らずいこう。今はまだ、彼女にとっての「一番近い男」でいられればいい。
そう自分に言い聞かせながら、俺たちの名前のない関係は続いていった。