アンコールはリビングで
「そうだよ! この間の合同ライブの映像。誰かがアップしたみたいなんだけど……ここ数日で急に再生数が伸びてて」

コメント欄には、「歌うますぎる」「とんでもないイケメンがいる」「声が良すぎる」といった称賛の言葉が並んでいる。

これが、いわゆる「バズる」というやつか。

「マジっすか……」

俺は呆然と画面を見つめた。

自分の歌が、見知らぬ誰かに届き、評価されている。
素直に嬉しい反面、どこか現実味のないフワフワした感覚だった。

「なんか……この動画見た時、ついに早瀬くんの才能が世間にバレちゃったか……って思っちゃった」

ふと、凪さんがグラスを見つめながらぽつりと呟いた。
その声には、喜びの中にほんの少しだけ、寂しさが混じっているように聞こえた。

「……え?」

「あ、いや! 推しが有名になるのはこの上ない喜びなんだけどね! もちろん!」

彼女は慌てて顔を上げ、明るく笑って誤魔化した。

けれど、俺は見逃さなかった。
彼女のその可愛い独占欲に、俺の胸がきゅんと音を立てる。

(……俺はずっと、凪さんだけのものだけどな)

心の中でそう呟きながら、俺は彼女の寂しさを埋めるように、少し意地悪く笑いかけた。

「安心してくださいよ。俺の『一番のファン』は、いつだって凪さんですから」

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