アンコールはリビングで
3. 運命のスカウトマン
俺の動画がバズり始めてから数週間後、6月に入った頃のこと。
ついにその「運命」が、俺の前に姿を現した。
いつもの公園で路上ライブを終え、機材を片付けている時のことだ。
凪さんと「今日は何食べる?」なんて話していると、一人の男性が近づいてきた。
年齢は俺より少し上だろうか。柔和で優しそうな風貌だが、その奥にある瞳には、鋭い理知的な光が宿っている。
「早瀬さん、はじめまして。私は『ステラ・ミュージック』の島崎優太と言います」
差し出された名刺を見て、俺は思わず息を呑んだ。
ステラ・ミュージック。数々の有名アーティストや俳優を抱える、業界大手の芸能事務所だ。
(……え? 本物?)
俺は瞬時に「白井不動産の早瀬」の顔を作り、笑顔で名刺を受け取った。
「はじめまして。……あの、失礼ですが、ステラの方ですか?」
「はい。急に驚きますよね。名刺も本物で……って私が言っても、信憑性ないかもしれませんが」
島崎さんは困ったように笑った。
あまりに話ができすぎている。新手の詐欺か、何か裏があるんじゃないか。
俺が警戒心を解かずにいると、少し離れた場所で待っていた凪さんが、おずおずと近づいてきた。
俺の動画がバズり始めてから数週間後、6月に入った頃のこと。
ついにその「運命」が、俺の前に姿を現した。
いつもの公園で路上ライブを終え、機材を片付けている時のことだ。
凪さんと「今日は何食べる?」なんて話していると、一人の男性が近づいてきた。
年齢は俺より少し上だろうか。柔和で優しそうな風貌だが、その奥にある瞳には、鋭い理知的な光が宿っている。
「早瀬さん、はじめまして。私は『ステラ・ミュージック』の島崎優太と言います」
差し出された名刺を見て、俺は思わず息を呑んだ。
ステラ・ミュージック。数々の有名アーティストや俳優を抱える、業界大手の芸能事務所だ。
(……え? 本物?)
俺は瞬時に「白井不動産の早瀬」の顔を作り、笑顔で名刺を受け取った。
「はじめまして。……あの、失礼ですが、ステラの方ですか?」
「はい。急に驚きますよね。名刺も本物で……って私が言っても、信憑性ないかもしれませんが」
島崎さんは困ったように笑った。
あまりに話ができすぎている。新手の詐欺か、何か裏があるんじゃないか。
俺が警戒心を解かずにいると、少し離れた場所で待っていた凪さんが、おずおずと近づいてきた。