アンコールはリビングで
4. ファミレスの決断

駅前のファミレス。
深夜の店内は空いていて、俺と島崎さんはドリンクバーのコーヒーを挟んで向かい合った。

島崎さんの話は、具体的で熱を帯びていた。

ネットでバズった動画を見て気になり、いろいろ調べて、今夜の路上ライブを聴きに来たこと。

俺の声質、楽曲のセンス、そして人を惹きつけるカリスマ性。
それらすべてに、プロとしての「才能」を感じていること。

「来年の6月頃を目処に、配信限定でシングルをリリースして、メジャーデビューしませんか?」

あまりに急な話に、俺はめまいを覚えた。
持ち前のビジネススキルを総動員して、話を整理しようと試みる。

「……ありがとうございます。評価していただいたことは、本当に光栄です。ただ……」

俺は一つ息を吸い、正直に打ち明けた。

「私、専業で音楽をやっているわけではないんです。昼間は会社員をしていて……白井不動産に勤めています」

「えっ!? あの大手の……?」

今度は島崎さんが絶句する番だった。

あの激務で知られる業界で働きながら、曲を作り、ライブ活動をしている。
その事実に、彼は驚きを隠せないようだった。

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