アンコールはリビングで
『……そっか。やっぱり、そうなんだ』

「え?」

『早瀬くんの声も、曲も、歌詞も……本当に、私の人生で一番好きな音楽だから。世間に見つかるのは、時間の問題だと思ってたよ』

凪さんの言葉は、確信に満ちていた。

「人生で一番好き」。

その一言が持つ重みに、俺は返す言葉が見つからなかった。

それと同時に、こんな深刻な相談をしている時でも、惚れた相手にそんな風に言ってもらえたことが嬉しくて……俺は泣きたくなるのを必死で堪えた。

『あのね、早瀬くん』

「……はい」

『私、仕事で失敗して落ち込んだ時とか、誰にも言えない悩みがある時、いつも早瀬くんの曲を聴いてるの』

彼女の声が、優しく俺の鼓膜を震わせる。

『早瀬くんの歌ってさ、無理に「頑張れ」って背中を叩くんじゃなくて、「そのままでいいよ」って隣に座っててくれるみたいな……そんな温かさがあるんだよ。だから私、何度も救われてきたんだ』

『だから、絶対に大丈夫。早瀬くんの歌なら、私みたいに救われる人が、世界中にたくさんいるはずだよ』

その言葉が、最後のピースを埋めた。

父に認められるための「結果」なんて、もうどうでもいい。
俺が欲しかったのは、保証でも安定でもない。

一番聴いてほしい人の、「君の歌に救われた」という事実だったんだ。

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