アンコールはリビングで
4. 聖夜の決断

それから、俺たちの関係は「電話」で繋がれるようになった。

月に2、3回。深夜の短い通話。
それが、俺にとって唯一の命綱だった。

楽曲制作に行き詰まった時、歌詞が出てこない時、俺は彼女に弱音を吐いた。

彼女は音楽の専門家ではないけれど、誰よりも俺の歌を聴いてきた「ファン」として、的確なアドバイスをくれた。

『ここのメロディ、ちょっと切ない感じで好きだな。早瀬くんの声に合ってる』

『歌詞ねぇ……無理に飾らなくていいんじゃない? 早瀬くんが本当に思ってることを書けば、きっと届くよ』

彼女の言葉は、いつだって俺の迷いを晴らしてくれた。
彼女の声を聞くたびに、俺の中の「好き」という感情が、どうしようもなく膨れ上がっていくのを感じた。

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