アンコールはリビングで
そして季節は巡り、12月上旬。

街がクリスマスムードに染まり始めた頃、俺は会社との面談に臨んだ。

「……え、退職?」

上司の驚いた顔を、今でも鮮明に覚えている。
俺は深く頭を下げ、用意していた言葉を告げた。

「はい。一身上の都合により、3月いっぱいで退職させていただきたく存じます」

理由は曖昧にしたが、俺の意思が固いことは伝わったようだ。

引き継ぎの資料も完璧に用意していたため、上司は渋々ながらも了承してくれた。

「……惜しいな。君ならもっと上に行けると思っていたのに」

その言葉に、胸が痛まなかったと言えば嘘になる。
けれど、後悔はなかった。

俺は自分の足で、新しい道を歩き出すのだ。

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