アンコールはリビングで
そして迎えた当日。

逸る鼓動を抑えきれない。PCを閉じる指先すらもどかしく、俺は転がるように凪さんの元へと急いだ。

予約してもらったイタリアンレストランで、俺たちは向かい合った。

「……へぇ、じゃあもうレコーディングも大詰めなんだ」

「そうなんですよ。昨日の夜もスタジオだったんすけど、エンジニアさんがこだわりの強い人で……」

久しぶりの再会。
美味しいパスタと、途切れない会話。

俺は仕事の愚痴や、制作の裏話を、少し誇張して面白おかしく話した。

「これ、まだ情報解禁前なんで、凪さんだけ。内緒っすよ?」

俺が人差し指を唇に当てて小さくウインクすると、彼女は「分かってるってば」と嬉しそうに笑った。

その拍子に、彼女がふと視線を落とし、耳まで赤くしているのが見えた。

その反応に、俺の心臓もトクンと音を立てる。
少しは、意識してくれているのだろうか。

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