アンコールはリビングで
食事を終え、最後のデザートのティラミスを食べている時だった。
コーヒーを一口飲んだ凪さんが、ふと改まった表情で俺を見た。

「早瀬くん、楽曲制作も仕事も……本当におつかれさま。これ……」

彼女がバッグから取り出し、差し出したのは、シックな包装紙に包まれた小箱だった。
有名な高級ブランドのロゴが入っている。

「……え?」

「私からもらっても、って感じかもしれないけど……甘いものは疲れも癒してくれるかなって思って。お口に合うといいな」

あまりの忙しさに、すっかり今日が何の日かすら忘れていた。
そうか、今日は2月14日だったのか。

「……」

俺は言葉を失った。

ただの友人、ただのファンに、こんな高価なチョコを贈るだろうか。
いや、彼女なら「応援」のつもりかもしれない。
でも、俺にとっては……。

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