アンコールはリビングで
「……いや、それでもいい」

俺は起き上がり、チョコの箱に手を伸ばした。
今は、この幸せを噛み締めるだけでいい。

でも、これだけで終わらせるつもりはない。

会社を辞める日は近い。
プロとしてデビューする日も近い。

そして、彼女への想いを告げる日も。

「……この1ヶ月で、絶対に凪さんを落とす」

なんとしてもだ。
ホワイトデーには、必ず「Yes」と言わせてやる。

俺は仕事以上に、楽曲制作以上に燃えていた。
自分の人生において何としても手に入れたいもの――それは、成功でも名声でもなく、彼女の隣という場所だった。

脳内には、3月14日までの緻密な計画と、甘い野望が張り巡らされていた。
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