アンコールはリビングで

Demo Tape 6 シュガーコートの包囲網

1. 『W計画』、始動

バレンタインの翌日。
俺の中で、ある壮大なプロジェクトが始動した。

名付けて、『W計画:最重要対象との恒久的パートナーシップ締結および独占権の確立』。

字面だけ見れば、会社の合併案件か何かのようだが、中身はシンプルだ。

「3月14日ホワイトデー、水沢凪を俺のものにする」。

ただそれだけのために、俺は全リソースを投入することを決めた。

相変わらず、もうすぐ大詰めの仕事は目が回るような忙しさだ。
6月のデビューに向けて楽曲は完成したが、プロモーションや打ち合わせが山積みで、自分があと4、5人欲しいという状況は変わらない。

だが、今は何を置いても「凪さん」だ。

1ヶ月後に、彼女に迷いなく「Yes」と言わせるために。
俺は人生の全てを賭けて、彼女を落としにかかった。

恥ずかしさなんて、とうに捨てた。俺は本気なのだ。

まず俺は、「電話だけで甘んじていてはダメだ」と自分を奮い立たせ、

『金曜の夜だけでも、また一緒にメシどうですか?』

そうメッセージを送ってみる。いわゆる「単純接触効果」狙いだ。
凪さんの返事は上々。

俺は戦場へと赴くような覚悟で、スマホのカレンダーに予定を打ち込んだ。

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