アンコールはリビングで
***

(その頃、居酒屋にて)

「凪ちゃん、どうしたの? さっきからスマホばっかり見て」

「えっ、あ、ううん! なんでもない!」

同僚に声をかけられ、私は慌ててスマホを伏せた。
画面には、早瀬くんからのメッセージ通知が並んでいる。

『俺だけにしたいんすけど』
『他の男に見せたくない』

(……な、なにこれ……)

いつもの後輩っぽい彼とは違う、少し強引で、熱っぽい言葉。
読むたびに心臓が跳ねて、お酒のせい以上に顔が熱くなる。

こんなの見たら、他の人と話してても上の空になっちゃうよ……。

そして、会の終わり。
私は千鳥足で帰宅し、部屋に入るなりドアにもたれかかった。

「……ふぅーっ……」

大きく深呼吸をして、火照った頬を両手で包む。
心臓の音がうるさい。

でも、約束は守らなきゃ。
私は震える指で、彼の名前をタップした。

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