アンコールはリビングで
『……もしもし』

ワンコールで繋がった。

低く、でもどこか焦ったような彼の声。
背後から、ポロン……とギターの音が微かに聞こえる。

「もしもし……早瀬くん? えっと……家に着いたから、電話してみた、よ……?」

私が恐る恐る告げると、電話の向こうで、彼が安堵したように息を吐く気配がした。

『……凪さん。……よかった……』

声のトーンが一気に柔らかくなる。
さっきまでの尖ったメッセージが嘘のようだ。

『さっきはすみません。送別会中なのに、メッセージ送りまくって……。男がいるって聞いたら、なんか余裕なくなっちゃって』

「う、ううん。ちょっとびっくりしたけど……」

私はスマホを握りしめ、熱くなる顔を伏せた。

「……でも、心配してくれてるんだなって思ったら……その、えっと…嬉しかった、から……』

しどろもどろになりながら伝えると、数秒の沈黙が落ちた。

『…………』

「……早瀬くん?」

『……あー、もう。勘弁してください』

彼が呻くような声を出し、ジャラッとギターの弦が鳴る音がした。

『……そんな可愛いこと言われると、俺、今すぐそっち行きたくなるんすけど』

「えっ!?」

『……冗談です(笑)。でも、メッセージで送ったことは本心なんで』

彼の声が、急に真面目なトーンに変わる。

『その可愛い声も、酔った顔も……俺以外の男にはあんまり見せないでくださいね。……約束ですよ?』

「……っ、うん……」

甘く、独占欲に満ちたその響きに、私は頷くことしかできなかった。

電話を切った後も、彼に縛られたような感覚が、心地よく胸に残っていた。

***

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