アンコールはリビングで
「……はは、部屋着姿も可愛いっすね」

吸い寄せられるように腕を伸ばし、そのまま無言で彼女を強く抱きしめる。
華奢な肩に顔を埋め、その温もりを全身で感じる。

「えっ、ちょっ……」

「……すいません、ちょっとだけ」

彼女の体温と、シャンプーの香り。
それが俺の肺を満たしていく。

「……充電。……凪さんの匂いしないと、もう明日頑張れないんで」

丁寧に謝りつつ、抱きしめる腕の力は緩めない。

俺は彼女の匂いを胸いっぱいに吸い込み、数秒間、その温もりに浸った。
それだけで、枯渇していたエネルギーが満タンになった気がした。

「……ふぅ」

俺は体を離し、愛おしさを込めて彼女を見つめた。

「凪さん、寒い中、外まで来てもらってごめんなさい」

「う、うん?」

「充電させてもらったんで、帰ります。凪さんも冷えるから、早く部屋戻ってくださいね。すみません、急に呼び出したりして……」

俺は彼女の頭を、慈しむようにゆっくりと撫でた。

彼女がエントランスに消えるまで見送り、待たせていたタクシーに戻る。

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