アンコールはリビングで
「……今の、彼女さん?」

バックミラー越しに、ドライバーのおじさんが声をかけてきた。

「いや……そうじゃないんです。今は、まだ」

「そうなんだ。こんな夜遅くにわざわざ顔見せてくれるなんて、いい子だねぇ。君、離しちゃいけないよ」

「……本当そうっすよね。俺には勿体無い、最高の人なんです」

俺はシートに深く体を沈め、夜の街を流れる景色を見つめた。

当たり前だ。絶対に離さねぇ。

ホワイトデーまで、あと少し。
俺の決意は、鋼のように固まっていた。

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