アンコールはリビングで
「…………鈍感ですねぇ」

「え?」

俺はフッと笑った。
口元は笑っているが、目は本気だ。

「全部、凪さんのこと想って書いたに決まってるじゃないですか」

「…………は?」

彼女の動きがピタリと止まる。

さっきまでの彼女の酔いが、一気に冷めていくのが分かった。
口をパクパクさせ、視線が泳ぎ、顔がみるみる赤くなっていく。

「え、あ、だ、だって……歌詞、すごく……愛とか、恋とか……えっ、私!? 私のこと!?」

「他に誰がいるんですか」

俺はテーブル越しに身を乗り出し、動揺の色が隠せない彼女の瞳を近距離で見つめた。
酔いに任せて、可愛く、あざとく、攻め込む。

「……凪さんは、俺のミューズなんで。……責任、取ってくださいよ?」

「〜〜〜っ!!」

彼女が言葉にならずにショートする様を眺めながら、俺はワインを飲み干した。

もう、隠すつもりはない。

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