アンコールはリビングで
「……俺の手、凪さんよりずっと大きいっすね」

「ほんとだー。これじゃピアノ有利だね」

彼女が無邪気に笑って手を離そうとした瞬間。

俺はその手を逃さず、指を絡めて「恋人繋ぎ」に変えた。
そのままギュッと握り込む。

「……っ!?」

「えっ、ちょっ、早瀬くん!?」

彼女が驚いて顔を上げる。

俺は逃げ道を塞ぐように、真剣な眼差しで彼女を見つめ、少し自嘲気味に笑った。

「……これじゃ、逃げられないっすね」

「……う、うん……」

彼女は顔を真っ赤にしながら、でも振りほどこうとはしなかった。

その反応が嬉しくて、俺は親指で彼女の手の甲を優しくさすった。

「……今はまだ、離してあげますけど」

俺はゆっくりと指を解き、名残惜しそうに彼女の手を解放した。

「……ホワイトデー過ぎたら、もう絶対離しませんから。覚悟しといてくださいね」

それは、明確な宣戦布告だった。

彼女は言葉を失い、ただじっと俺を見つめ返していた。
その瞳が潤んでいるのを見て、俺の決意は揺るぎないものになった。


< 214 / 638 >

この作品をシェア

pagetop