アンコールはリビングで
「……でも、すごかったよ。あんな人だかりができるなんて」

「……凪さんに届いたなら、それでいいけど」

「えっ……?」

彼が不意に真面目な顔で私を見た。
そして、彼はまだ私の手を強く握ったままであることに気づき、ハッとして手を離した。

「……あ、ごめんなさい。痛くなかったですか?」

「う、ううん。大丈夫……」

離れた手のひらが、急に寂しくなる。
残っているのは、彼の体温と、強引に引かれた時の力の強さだけ。

「……凪さん?疲れちゃいました?」

「……っ、だ、大丈夫!」

私は慌てて両手で頬を隠した。

言えない。
今の歌が、まるで「私へのプロポーズ」みたいに聞こえて、心臓が爆発しそうだなんて、絶対に言えない。

(……この人、無自覚なの!? それとも確信犯!?)

ボブ・ディランの枯れた味わいとも、アデルの悲痛な叫びとも違う。
早瀬湊という男の、底知れない包容力と愛を感じさせる『Make You Feel My Love』。

彼の歌声は、私が今まで聴いてきたどのレコードよりも、深く心に突き刺さった。

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