アンコールはリビングで
カウンターへ向かいながら、俺はホットのブラックコーヒーと、彼女のためのカフェラテを注文した。
出来上がりを待つ間、ふとさっきの楽器店での出来事を反芻する。
(……さっき、凪さん、確かに『ずるい』って言ってたよな……)
あの呟きは、聞き間違いじゃないはずだ。
ただの推しのアーティスト、あるいは仕事先の後輩相手に、あんな熱っぽい声で「ずるい」なんて、そんな艶っぽい言葉、言わないはずだ。
(……あれは、俺という男に向けられた言葉だと、自惚れてもいいよな?)
あの瞬間、彼女の瞳に浮かんでいたのは、紛れもなく「降参」の色だった。
俺の中で進めてきた極秘プロジェクト、『W計画:最重要対象との恒久的パートナーシップ締結および独占権の確立』。
ふざけた名前だが、中身は至って真剣だ。
この1ヶ月、なりふり構わず積み上げてきたアプローチは、どうやら実を結びつつあるらしい。
そうであってくれ、と祈るように願いながら、俺は二つのカップを持って席へと戻った。
窓の外では、春の陽が少しずつ傾き始めていた。
カフェラテの湯気を挟んで、他愛のない話をする。
けれど、夕暮れが近づくにつれ、これから訪れる夜の予定に向けて、少しずつ口数が減っていく。
沈黙すら心地よい、けれどヒリヒリするような、良い意味での緊張感が高まっていた。
出来上がりを待つ間、ふとさっきの楽器店での出来事を反芻する。
(……さっき、凪さん、確かに『ずるい』って言ってたよな……)
あの呟きは、聞き間違いじゃないはずだ。
ただの推しのアーティスト、あるいは仕事先の後輩相手に、あんな熱っぽい声で「ずるい」なんて、そんな艶っぽい言葉、言わないはずだ。
(……あれは、俺という男に向けられた言葉だと、自惚れてもいいよな?)
あの瞬間、彼女の瞳に浮かんでいたのは、紛れもなく「降参」の色だった。
俺の中で進めてきた極秘プロジェクト、『W計画:最重要対象との恒久的パートナーシップ締結および独占権の確立』。
ふざけた名前だが、中身は至って真剣だ。
この1ヶ月、なりふり構わず積み上げてきたアプローチは、どうやら実を結びつつあるらしい。
そうであってくれ、と祈るように願いながら、俺は二つのカップを持って席へと戻った。
窓の外では、春の陽が少しずつ傾き始めていた。
カフェラテの湯気を挟んで、他愛のない話をする。
けれど、夕暮れが近づくにつれ、これから訪れる夜の予定に向けて、少しずつ口数が減っていく。
沈黙すら心地よい、けれどヒリヒリするような、良い意味での緊張感が高まっていた。