アンコールはリビングで
2. グラスに忍ばせた誓い

18時。
俺たちは予約していたジャズクラブ&レストラン「Midnight Blue」の重厚な扉を開けた。

薄暗い照明。ビロードの椅子。
ステージからはピアノトリオの生演奏が心地よく響いている。

案内された席に着き、俺たちはそれぞれのカクテルを注文した。

テーブルに運ばれてきたのは、ブランデーベースの深く美しい赤褐色をした『キャロル』と、彼女のための白く可憐なショートカクテル『ホワイト・レディ』。

「……乾杯」
「ん、乾杯」

グラスを軽く合わせる音が、心地よく響く。

「……ん、美味しい。ホワイト・レディ……今日にぴったりだね。爽やかで、でも大人な味」

「凪さんのその服にも、すごく合ってますよ」

褒め言葉に彼女がふわりと微笑み、照れたようにグラスに口をつける。

ホワイト・レディのカクテル言葉は『純心』。
飾らない真っ直ぐな彼女に、これ以上なく似合うカクテルだ。

そして、俺が頼んだキャロルに込められた意味は――『この想いを君に捧げる』。

彼女はきっと、俺がそんな意味を込めてこのグラスを傾けているなんて、知る由もないだろう。

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