アンコールはリビングで
「……これからの俺の歌、誰よりも一番近くで聴いててくれませんか」

「凪さんが隣にいない未来なんて、俺にはもう、一ミリも想像できないから」

彼女の瞳が、微かに揺れた。

俺は逃げ道を塞ぐように、その瞳を真っ直ぐに射抜く。

「……今は何もない俺ですけど、絶対に後悔させません。俺の全部を懸けて、凪さんを幸せにします」

「好きです。……俺と、付き合ってください」

言い切った瞬間。

静寂を壊すほどの重低音が、体内の空気を震わせた。
心臓の音が耳元まで響いて、さっきまでの自分の声が、ひどく遠いものに感じられる。

何度も頭の中で反芻した決意。ずっと彼女に伝えたかったシンプルな言葉。

それをようやく解き放つことができた安堵と、彼女の返事を待つ間の、これまでの人生で感じたことがないほどの極限の緊張感。

俺はただ祈るように、目の前の彼女を見つめていた。

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