アンコールはリビングで
「〜〜〜〜っ! もう!!」

私は抱きしめていたクッションを、ソファの背もたれにバンッ! と叩きつけた。

「じれったい!! なんでそこで行っちゃうの怜司!? 『俺にはお前が必要だ』って抱きしめるところでしょ今の!! 舞花ちゃんも『好き』って言えばいいのに! あーもう、両片思いのすれ違い、胃が痛い!!」

私がテレビ画面に向かって、見えない台本にダメ出しをするように身悶えしていると。

「……うるさいな。耳元で叫ぶなよ」

いつの間にか私の隣から滑り落ちて、再び私の太ももを定位置として占拠していた国民的スターが、不満げに寝返りを打った。

グレーのスウェット姿。洗いたてのサラサラな髪。
画面の中の完璧なスーツ姿の男と同一人物とは思えないほど、気の抜けた――そして無防備な早瀬湊が、私の膝を枕にしてあくびをしている。

「うるさくもなるよ! なんなの怜司、あんなに賢いのに恋愛偏差値ゼロじゃん! 視聴者はみんな『そこで抱きしめろ!』ってテレビの前で叫んでるよ!?」

「知らねぇよ。台本がそうなってんだから」

「湊からも監督さんに言ってよ! 『ここは雨の中でキスすべきです』って!」

「言うかバカ。ラブコメの4話でキスしたら最終回まで尺が持たねぇだろ」

正論すぎるメタなツッコミを入れられ、私はぐぬぬと唸った。

「それに」

湊は私の膝の上から、長い腕をぐんと伸ばした。
大きな手が、私の頬を包み込むように撫でる。

「画面の中のヘタレと一緒にすんなよ。……俺はあんなダサいすれ違い、しなかっただろ?」

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