アンコールはリビングで
「ひゃっ……!」

至近距離に、端正な顔が迫る。

いつも彼からするあのウッディアンバーの香水……ではなく、お風呂上がりの少し甘いシャンプーの香りと、彼自身の温かくて落ち着く匂いが、私をすっぽりと包み込んだ。

「俺がどんだけ余裕なかったか、全然分かってねぇだろ」

少し低い、甘い声が耳元を掠める。

「あの夜さ、Midnight Blueでカクテル飲んでた時。凪がステージの歌手見てうっとりしてるの見て、本気で焦ったんだからな。……他の男にあんな顔見せんなって、狂いそうだった」

「え……あの時、そんなこと考えてたの?」

「俺はいつだって凪のことしか考えてねぇよ」

ちゅ、と。
文句を言おうとした私の唇が、軽いキスで塞がれた。

「……あの日の『W計画』から4年。……俺の重たい愛、ちゃんと骨の髄まで思い知ってるか?」

「だ、誰がW計画って名付けたか知らないけど……十分に、思い知らされてる、よ……」

私が赤い顔で抗議するように睨むと、彼は心底満足そうに、意地悪く笑った。

「そ。……なら、いいけど」

彼はそのまま私の首筋に顔を埋め、大きく深呼吸をした。

さっきまでのSっ気のある態度から一転、今度は大型犬のようにすりすりと甘えてくる。
この温度差に、私はいつまで経っても慣れることができない。

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