アンコールはリビングで
「……なぁ、凪」

「ん?」

「週末のオフ、出かけようぜ。……久しぶりに、ガレリアプラザで買い物でも行くか」

首筋に落とされた声に、私は自然と頬を緩めた。

「ガレリアプラザかぁ。懐かしいね」

「だろ。……あのホワイトデーの後、すぐに同棲のプレゼン資料作って、凪の実家にも挨拶行って……あの頃の俺、マジで必死だったわ」

「ふふ、あの完璧すぎるExcelの同棲プレゼン資料、私まだ大事にデータ残してるよ? 私の両親に挨拶した時も、あんなにガチガチに緊張してる湊、見たことなかったし」

私がからかうように笑うと、湊は少しバツが悪そうに顔を背けつつ、私を抱きしめる腕の力をさらに強めた。

「うっさい。……絶対に手放したくなかったんだから、当たり前だろ」

耳元で拗ねたように呟く声が、たまらなく愛おしい。

画面の中の不器用な二人の恋は、まだしばらく雨の中を彷徨いそうだけど。
私の目の前にいる、スウェット姿で甘えてくるこの我儘なスターとの日々は、どんなドラマよりも甘く、そして温かい。

「うん。……行こっか」

私が彼の背中に腕を回して優しく撫でると、彼は安心したように目を閉じ、私をさらに強く抱きしめた。
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