アンコールはリビングで
「お、準備できた……って」

言葉を切り、湊がピタリと足を止める。
私も、彼を見た瞬間に思わず目を見開いた。

白のハイゲージニットに、黒の控えめなワイドスラックス。
そしてその上に羽織っているのは、上質な生地のオーバーサイズのベージュのロングコートだ。

アイテムのシルエットこそ今風にアップデートされているけれど、その『配色』は、あの日、彼が着ていたステンカラーコートの組み合わせそのものだった。

「……」
「……」

お互いに顔を見合わせ、数秒の沈黙がリビングに落ちる。

「……凪、それ狙ったろ」

先に口を開いたのは、湊だった。
琥珀色の瞳が少しだけ細められ、口角がニヤリと上がる。

図星を突かれた気恥ずかしさを誤魔化すように、私はむっと唇を尖らせた。

「そういう湊だって、あの時のコーデの色、意識してるじゃん!」

「……悪ぃ? 久しぶりのガレリアプラザなんだから、気合入れるだろ普通」

彼は少し照れくさそうに顔を逸らしながら、べっ甲柄のお洒落な伊達メガネをかけ、黒のマスクを引き上げた。
顔の半分以上が隠れているのに、その圧倒的なスタイルの良さと隠しきれない色気は、どう見ても『只者』ではない。

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