アンコールはリビングで
2. 視線の中心と、独占欲

久しぶりのガレリアプラザは、週末ということもあり、凄まじい熱気と人混みに包まれていた。

「……うわ、すげぇ人。普段こんな人多いとこ来ねぇから疲れるな」

湊がマスク越しにくぐもった声で苦笑しながら、すれ違う人とぶつからないように、私の肩を抱き寄せてさりげなくガードしてくれる。

メインスクエアに足を踏み入れ、私たちは巨大な吹き抜けを貫くエスカレーターに乗った。
ゆっくりと上昇していく視界の先に、あの『シャンパンゴールド』の装飾が施された巨大な柱が見えてくる。

(……あの色のトラブルがあったから、今こうして隣にいるんだな)

当時、ディレクターだった私が担当していたメインスクエア。
その柱のラッピング色の見え方を巡るトラブルがあったからこそ、担当デベロッパーだった彼と出会い、あの非常階段での出来事へと繋がったのだ。

そんな感傷に浸りながら、一段上に立つ彼の横顔を下から見上げる。

視線に気づいた湊がこちらを見下ろし、マスクの奥で優しく目を細めると、私の手を自分のコートのポケットの中に引き入れ、長い指を絡めて強く握り直した。

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