アンコールはリビングで

16 非常階段のアンコール

1. 隠れ家イタリアンと、甘いおねだり

買い物をひとしきり楽しんだ後、私たちは少し遅めのランチをとることにした。

「腹減ったな。何食う?」

「うーん……ガレリアプラザの上の階に、半個室になってるイタリアンがあったはず。そこなら、顔バレも気にせずゆっくりできるんじゃないかな?」

「お、いいね。そこにすっか」

案内されたのは、通路から死角になるように設計された、落ち着いた照明のボックス席だった。
カーテンで仕切られたプライベートな空間に入り、湊はホッと息をついて、伊達メガネと黒のマスクをようやく外した。

「……あー、やっと顔出せた。息苦しかったわ」

「お疲れ様。なんとかバレずにうまく買い物できたね」

お互いに笑い合いながら、メニューを開く。
普段、家では私の作る「腸内環境と疲労回復を重視した茶色い和食」ばかりを食べているからこそ、たまにこうして外で食べるリッチな洋食は、特別なデートの醍醐味だ。

私たちはエルダーフラワーとミントの微炭酸モクテルで乾杯をしてから、新鮮な真鯛のカルパッチョと、彩り豊かな10種野菜のガーデンサラダをつまんだ。

その後は、濃厚なポルチーニ茸のクリームパスタと、焼き立てのマルゲリータピザをシェアして、久しぶりの外食の味を存分に堪能した。

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