アンコールはリビングで
やがて、美しいお皿に乗せられた二つのデザートが運ばれてきた。
私が目を輝かせていると、湊は自分の手元に置かれたティラミスをスプーンで小さくすくい、テーブル越しに私の方へと差し出してきた。

「ん」

「えっ……」

「ほら、早く。こぼれる」

少し不器用な手つきで「あーん」をしてくれる湊に、私は周囲の目がない個室とはいえドギマギしてしまう。

けれど、彼の真剣な眼差しに急かされ、私は少し背伸びをするようにして、そのティラミスをパクリと口に含んだ。

「……っ、おいしい……!」

マスカルポーネの濃厚な甘さと、エスプレッソのほろ苦さが口いっぱいに広がる。

私が幸せを噛み締めていると……ふと、強烈な視線を感じた。
目を開けると、フォークを持ったままの湊が、琥珀色の瞳でじっと、穴が開くほど私を見つめている。

(……あ。これ、もしかして……)

言葉には出さないけれど、完全に「あーん待ち」の顔だ。
普段はあんなに俺様で堂々としているのに、こういうところは本当に、ご褒美を待つ大型犬そっくりでたまらない。

(……か、可愛い……)

私は込み上げてくる照れを必死に抑えながら、自分の手元にあるピスタチオのカッサータをスプーンですくい、彼の方へとそっと差し出した。

「……あ、あーん……?」

「……ん」

湊は待ってましたとばかりに身を乗り出し、私のスプーンからパクリとデザートを口に入れた。

そして、冷たいアイスケーキを咀嚼しながら、これ以上ないほど満足げに目を細めた。

「……うん、美味い。凪が選んだやつ、正解だな」

口元にほんの少しだけクリームをつけたまま笑う彼が愛おしくて、私は胸の奥が甘く溶けていくのを感じていた。

< 265 / 515 >

この作品をシェア

pagetop