アンコールはリビングで
「そっか。とりあえず、リビングまで行こ? お水飲む?」

「……いらね」

私が彼の腕を引いて立たせようとした瞬間。
湊が私の腰に長い腕を回し、そのまま玄関の壁に私を押し付けるようにして、胸元にすっぽりと顔を埋めてきた。

「ちょっ、湊……!?」

「……んー……凪の匂いする……」

「当たり前でしょ、私の家なんだか……じゃなくて、二人の家なんだから。ほら、重いってば」

抗議しても、彼は腕の力を緩めるどころか、さらに強く私を抱きしめてきた。
アルコールの熱を持った大きな体が、私をすっぽりと包み込む。

「……なぁ、寂しかった?」

「えっ?」

「……俺いなくて、寂しかっただろ」

「別に。本読んでたし、一人の時間満喫してたもん」

私が強がって言うと、胸元に顔を埋めたままの彼が、ふるふると首を横に振った。

< 276 / 650 >

この作品をシェア

pagetop