アンコールはリビングで
「わっ……」

抵抗する間もなく、視界がぐるりと回る。
気がつけば、私はソファに押し付けられ、さっきまで私の膝にいたはずの彼が、私の上に覆いかぶさっていた。

形勢逆転。
見下ろしてくる彼の瞳が、逃げ場を塞ぐように私を射抜く。

「……っ、湊、映画……」

「知るかよ、そんなん」

彼は低く囁くと、私の言葉を塞ぐように唇を重ねてきた。
触れ合うだけの、優しいキス。
チュ、という甘いリップ音だけが、静かなリビングに響く。

けれど、それだけでは終わらなかった。
次第に角度が変わり、深く、溺れるような熱が注がれる。

バスケコートで見せたような嫉妬の炎ではない。
もっと静かで、深く、抗えない甘さ。

日曜日の昼下がりの気怠い空気の中で、私たちは互いの輪郭を溶かし合うように口づけを重ねた。
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