アンコールはリビングで
「……っ、違うの……湊は、何も悪くない……っ」

「……凪?」

我慢しようとしたのに、声が震え、視界が一気に滲んでいく。

「……っ、私が、バカなだけ……っ。嫌な女なだけなの……っ」

ポロリと、私の目から透明な雫がこぼれ落ちた。

「……っ! な、凪!? なんで泣いて……っ」

湊が慌てて私の頬を両手で包み込み、親指で必死に涙を拭おうとする。
その不器用な優しさに触れたら、もう強がることなんてできなかった。

「……っ、あの時の、テレビ局の……元カノさんのこと……っ」

「え……?」

「……業界の人だし、また仕事で会ったりして……学生の頃みたいに、惹かれ合っちゃったらどうしようって……。湊のこと、信じてるのに……ずっと、頭から離れなくて……っ」

堰を切ったように、心の奥底の感情が溢れ出す。

「……私には分からない学生時代の湊を知ってるし……テレビ局で働くくらい綺麗で、業界の話も合うだろうし……っ。こんなことで嫉妬するなんて、面倒くさい女だって、分かってるのに……っ!」

両手で顔を覆い、しゃくり上げる私を、湊はただ呆然と見つめていた。

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